作成日:2020/10/01
【第50回】ケーススタディ⑶「1本の古釘」
昔から語り継がれているビジネス例話に「1本の古釘」というものがある。ある作業 場に梱包資材の断片が放置されている。木片に1本の古釘が刺さっており、まるで大き な押しピンのように、それも尖端が天井に向かった状態になっているのである。 〈事例の紹介〉ある朝、この職場に出社して来た社員たちが各々異なる反応を示した。 具体的には次のようなタイプに分かれたのだ。まずは、 ⑴尖端が上を向いた古釘に「気づく人」と「気づかない人」に分かれた。気づかない人 は素通りで終わり、気づいた人も ⑵「危ないと思う人」と「何も思わない人」の2つに分かれ、危ないと思った人も ⑶「自分で行動を起こす人」と「他の誰かに委ねる人」に分かれる。自分でやる人も ⑷「今すぐやろうとする人」と「後でやろうとする人」に分かれる。そして最後は ⑸今すぐにやろうと思った人が、その通りに「直ちに実行する人」と不思議なことに 「結局はやらない人」に分かれる。 誰かが釘を踏み怪我をした時、この最後の人が「急な用を思い出した」とか「上司に 呼ばれた」など、やらなかった理由を一所懸命に説明することになる。 最初に気づかずゲームが終わった人を0点とすると、気づいて自分ですぐに片付けた 人は100点満点。途中で分岐してレースから離脱した人それぞれに評価点を与えると、 最終段階まで来て、やらなかった人に何点与えるか。惜しい所まで来たと思われるが、 この評価は大変厳しくなされ、途中の点数は加味されず、一気に「−100点」となる。 気づいて、分かっていながらやらない人の罪の深さ、責任の大きさを説くわけだ。 放置すると危ないことに気づき、自らが直ちに行動を起こし対処する。それを当たり前 の職場にすることであり、その方法には他者への報告、提言、指導なども含まれる。 〈まとめ〉職場の問題には@気づく:問題意識、A危ない:危機意識、B自分で:自主意識、 C今すぐ:価値意識、Dやり抜く:実行力、と階段を昇るように対応することが大事だ。 また問題に気づく大前提としてE目的意識(このケースでは「職場の安全意識」)が不可 欠であり、合わせて「5つの意識と1つの力」=「5意識1力」が必須条件となる。 |
〈今月の四字熟語〉「切磋琢磨」
問題のレベルを上げながら、その解決に成功するには、社員の「5意識1力」を日々 鍛えることが必要。そのためには、常に目的を考え関心を持ち、健全な危機感・責任感 の下、優先順位を知り、主体的に働くように導くことだ。実戦的な方法は、社員の知識 や経験不足をカバーしながら能力開発するよう「報連相」を習慣化し、学び・教え合う 風土をつくることである。言わば「切磋琢磨」という「人づくり合戦」の展開だ。 |