作成日:2017/03/01
【第7回】危ない経営者⑸「頭の固いマジメ人間」
危ない経営者の5番目は誠実で曲がったことを嫌うマジメな性格だが、やや考え が保守的で、大胆な発想が苦手なため「頭の固いマジメ人間」と呼ばれる。前例 や常識という既存のレールを走ることで安堵感を覚えるため、未来を切り開こう とする新しい発想の芽を摘みがちで、沈滞ムードを生むことが多い。 「石橋を叩いて渡る」という慎重さを持っているため、致命傷を負うほどの事故 に遭うことは少ないが、その反面大きく飛躍することも少ないタイプだ。企業は 「環境適応業」である。不変の原理・原則を守りながらも、常に構成員の意識と 行動をレベルアップさせ、それを新しいシステムとして構築して行かないと生き 残れない。その推進役のトップの脳が萎縮症を起こすことは避けたい。 目的とそれをさえぎる現状の課題をハッキリさせ、問題の本質に目をやり前例 がないからやってみようの気概で問題解決に挑むことが大切。昔、大阪の地下鉄 のある駅の売店に配属されて、売上を一気に3倍に伸ばした新卒女子社員がいた。 ラッシュアワーの売り逃しに着眼し、暇な時間帯に釣り銭の準備をしたのだ。 金種ごとの小銭の山を作り、とくに売れ筋商品から生まれる釣り銭額を多く揃え て置くことで受け渡しの時間を大きく削減したのであった。 多くの先輩が「ねーちゃん、お釣り、お釣り。電車が出る、もういい」という お客の声を当たり前の事としてやり過ごしていたのを「もったいない」と感じ、 メスを入れた。すると釣り銭渡しの非効率さが最大のネックであることに気づき、 前例のないやり方を工夫し、実行して成果を上げた。若くして持っていた彼女の 強い問題意識と改善意欲、そして柔軟にアイデアが出せる知恵が決め手であった。 彼女は、のちに事業家、女性経営者として成功を納めたが、この若い頃からの 誠実で、熱心に取り組む姿勢の確立と問題の本質を的確にとらえピントを合わせ た上で、柔軟に改善策をひねり出す発想力がその推進役を果たした。 |
〈今回のまとめ〉「誠実さと柔軟性」
課題に対してマジメに立ち向かい、物事の本質から考え問題点を把握するが、 その改善策を考案するときには前例や常識に囚われず柔軟に考えることが大事。 「ストーンヘッド人間」はルール、規定、他者の動き、などを先行して考慮する ため、自らが先陣を切って革新することが少ない。「変化しないことのリスク」 「横並びのリスク」に注目し、変化の波を活かすよう、柔軟に発想転換しよう。 |