作成日:2020/09/01
【第49回】ケーススタディ⑵「応接室から」
筆者は長年にわたり多くの企業を訪問してきたが、振り返って思うのは、各社各様の 空気感が現場に漂っていることである。今回取り上げるA社にも際立った空気感があっ たが、それを醸し出す具体的な出来事は、訪問時に通された応接室から始まった。 〈事例の紹介〉経営相談の申し込みを受けて、午後一番に地方商社A社を訪ねた。受付で 挨拶を済ませ応接室に案内された。初めての訪問時には、最寄り駅の状況から始まり、 先方オフィスの立地・環境の特徴まで注目しながら訪問する。到着してからは、入口の 清掃状況、接遇、雰囲気、掲示物の種類・内容…と短時間に現状をキャッチし、面談時 の話題の取っ掛かりとするようにしている。質問したり、感想を述べたり、問題提起を したりすることになる。ところがA社では、いきなり問題が向こうからやって来た。 通された応接室に、直前に使用していた人の湯呑みなどが放置されていた。昼食後の 片づけを忘れたような感じであった。ご案内頂いた方が慌てて片づけているとき、ふと 室内のカレンダーを見ると先月のページのままだ。月が変わり2日は経過していたが。 また置時計が少し遅れていることにも気づいた。先方が来るまでに少し時間がかかる ことを聞き、手洗いを借りようと事務所の横を通ったが、壁に貼られた掲示物は上下に 凸凹があり、壁掛け時計は若干進んでいた。さらにデスクの足元には伝票のような書類 が1枚落ちていたので、そのことだけは直ぐにお伝えした。 営業活動の課題についてお話を頂き、アドバイスを申し上げコンサルティング費用の 概要も提示したが条件が合わずにおいとました。その後も縁がなかったが数年経って、 業績困難な状況に陥ったことを風の便りに聴き、「やはりそうか」との思いがした。 〈まとめ〉商人の原点は「始末・算用・才覚」であり、中でも最初の「始末(しまつ)」の 大切さは語り尽くせない。物事の「始めと終わり」の区切り、ケジメをつけることであ り、これが不明瞭だと約束やルールが守られず信用を失い、損得もハッキリせず、整理 ・整頓も悪く、ムダな作業が多くなる。信賞必罰のメリハリもなく、ダラダラした風土 を醸成して、ヒト・モノ・カネの経営資源も中途半端な活用になってしまう。「一事が 万事」であり、やがて経営危機を招くことは必至である。 |
〈今月の四字熟語〉「凡事徹底」
やると決めれば誰もが出来る、単純な事柄を徹底して行い継続すること。重要度は高 いが単純なため、その項目と基準をハッキリさせた上で、継続する仕組みを作っておか ないと途中で立ち消えになりかねない。リーダーの「決める、守る、守らせる」という 実践が第一。次にメンバーが理解・納得しやすいような方針伝達と、相互のチェック& アドバイスが出来るような「文章化、見える化」と「評価の場づくり」が欠かせない。 |