作成日:2020/08/01
【第48回】ケーススタディ⑴「ヤリガイのCM」
今回から、これまで述べて来たことをベースにして、様々な事例を取り上げたい。 色んな角度、ジャンルから取り上げ、「伸ばす経営」の生きたヒントにして頂きたい。 そのため、毎回の「まとめ」に「四字熟語」を加えて、学ぶポイントをより鮮明にする ことにチャレンジしようと思う。シリーズの第1回はあるTVコマーシャルに紹介された 職場風景をもとに、「部下の働きがい」を促進する「理想の上司像」について考える。 〈事例の紹介〉一昔前、「転職時代の幕開け」のフレコミで大量に流されたテレビCMが あった。ドラマ仕立てであり、丁度、新入社員が配属されて間もない頃のある職場風景 が舞台になっている。複数のメンバーが机に向かい黙々と仕事に勤しんでいるが、おか しなことに全員が大小様々な先のとがった巻貝「ヤリ貝」を背中に着けているのだ。 場面が変わり、職場の上長と思える人物が洗面所で手を洗っている。ふと目をやると 傍らに大きな「ヤリ貝」が置かれている。それを職場に持ち帰った彼は大声で「誰だ! 洗面所にこれを置き忘れたのは?」と呼びかける。すると、一斉に皆んなが背中に手を やり確認し、1人の男性が頭を掻きながら「スミマセン、私のです」と近づく。そこで すかさず上長が「新入社員の森君か、ダメじゃないかヤリガイを忘れちゃ」と激励しな がら手渡すわけだ。仕事にヤリガイを感じることが大切だ、あなたのヤリガイは大丈夫 だろうか、と投げかける問題提起型のCMであった。 そして二作目は一気にブラックユーモア調になっていた。大きな「ヤリ貝」を着けた 新入社員の森君が、激励をもらった上長の背中に回り、彼のヤリ貝の先をつまみながら 布切れで磨いているシーンで始まる。だがそのヤリ貝はあまりにもか細くなっており、 「ポキッ」と折れてしまい、あわてる森君。すかさず「〇〇就職情報!」とテロップが 流れ、「先輩・上司の方、ヤリガイを忘れていませんか?」という皮肉を込めたCMに なっており、大方のベテランがドキッとさせられたのであった。 〈まとめ〉社員が働きがいを感じるには、仕事を主体的にとらえた上で、自ら目標を掲げ チャレンジするように誘導することが大切。大きなヤリガイは納得のいく大きなテーマ 設定と、到達するための計画・実行・努力から生まれる。まさに「ヤリ貝」を横にした 時にできる円錐の斜面を懸命に登っている姿の実現こそがヤリガイの象徴である。 |
〈今月の四字熟語〉「自己目標」
外部からの強制ではなく、自らの意思で良かれと思い設定する目標のこと。押しつけ られたものと違い、達成動機も高くなり成果も生まれやすい。公表する必要もなく、自 らの胸に秘めながらPDCAを回すものである。あえて公言し、「自分にタガをはめる」 方式もあるが、沈黙の燃えるエネルギーで着実に推進して行くのが良い。「自己目標」 の意義を説きながら、自らやって見せる、上司の「ヤリガイモデル」が不可欠である。 |